乙姫.迷宮Smile 6話、7話~あん 作~

乙姫.迷宮Smile 6話、7話~あん 作~


(6話)
しばらくの沈黙、、、そしてツインテールがまた口を開いた。

ツインテール「浦島様はここを捨てて地上に帰りたいって仰ったワケではないのです、、、あの方は竜宮での時間の過ぎ方と地上での違いをちゃんとご存知でした、、、納得の上、乙姫様との暮らしを選ばれたのです、、、、でも、時がたつにつれ、、、浦島様の心にやはり地上をもう一度見たい、、、という気持ちが沸々、湧いてきて
、、、仕方なかったんだと思います、、、そしてある日、一日だけ地上を見に行きたい、、、と、そうおっしゃいました。もう誰も自分を知る者もないだろうし、、、地上も随分、変わってしまっただろう、、、それでも、、、自分の生まれたあの世界に一日だけでも帰りたい。少し地上を味わったら、また必ず戻るから、、、と、そう言われました。
その願いはあまりにも強いものでしたので、、、
乙姫様は渋々でしたがご承知なさいました。
で、玉手箱ですが、あれは地上人とこの竜宮を繋ぐ為には必要不可欠なものなのです。地上人がこの竜宮で過ごすには、地上人としての魂をいったん玉手箱に預け入れます。そうすることで地上人は竜宮の者と同じ感じで、ほら、、、こうして、今、あなたが水中でも地上にいるかのように息をしたり話したりできる、、、これも玉手箱の力ゆえです、、、」

、、、そ、そうなんだ!
、、、!!、、、

俺「ってことは今、俺の魂、玉手箱の中かっっ!!!!えーーーっどうなってんの!!俺ーーっっ(焦)」

ツインテールは面倒くさそうにチラっと俺を見て

ツインテール「いろいろ不思議に思うことがあっても黙って聞いてください、、、と、、、申しましたのですがぁ、、、」

うぐっ、、、そ、そうだった、、、が、こんなハチャメチャすぎる話の連続、、、黙ってるの
厳しいーー(疲)

ツインテールは話を続けた
「だから、浦島様は竜宮より出て地上でしばらく時間を過ごす間は魂の入れ物、玉手箱を常に携帯しておく必要があるのです。そうしなければ、また無事なお姿で竜宮へ戻ることはできません。そして、先ほど申しましたけど玉手箱を開けてしまってはいけない。命がなくなりますから。だけど、、、浦島様は開けてしまわれました、、、
浦島様はね、、、お伽噺の中では魚をとる漁師となってましたっけ?
あれはちがいます。
ほんとは、あの辺りを治める領主の家の若様でした。
あの日わたしをクソガキから救ってくださった時は奥様とお子様を連れて浜辺へ遊びにいらしていたんです、、、」

俺「浦島!結婚して奥さんとか!子どもまでいたのっっ!!で、、、乙姫と!!えーーーっ!?」

チッ、、、ツインテールが舌打ちをしたのがハッキリわかった。

俺「、、、あ、はいはい、疑問、質問は後にしまーーす」(焦っ)

ツインテール「浦島様の事を竜宮に戻ってから乙姫様にお話したところ、姫はたいそう浦島様にご関心を持たれまして一度お会いしたいと強く申されたのです、、、そこで私は人の姿に身をやつして浦島様が再び浜辺へお出でになった時、、、ご恩返しを申し出て、こちらへお連れいたしました」

昔の人って超素直なの?
いきなりご恩返して、、、よく、カメについてこれたな、、、
あ、いや、待てよ、もしかした、、、浦島もさらわれたんじゃ???
うーーーん、どっちだろ?

考えこんでる俺を見てツインテールが言う

ツインテール「えーと、先を続けてよろしいでしょうか?(イラッ)」

あ、はいはい、、、どーぞ、、、(汗)

ツインテール「浦島様は若く凛々しくお心のお優しい方でした、そして、探求心が非常に強い方で竜宮をとても気に入られて、この、海の深い世界をもっと知りたいとおっしゃいました、、、そこで、、、、乙姫様がいろんなお話をお聞かせしたりして、お二人はどんどん仲睦まじくなってゆかれたのです、、、そして、、、、浦島様はここ竜宮で乙姫様と一生共に過ごされる事を誓われたのです、、、だけど、、、」

だけど、、、地上に戻りたくなったんだ、、、
そうして浦島は少し見てくるだけだと言って地上に帰り、、、
そして、何かに絶望して
玉手箱を開けた、、、

ツインテール「地上に帰られる時、私はお供として、浦島様にお付きしました。何百年も時が過ぎた地上はもう浦島様の見知った世界ではございませんし、、、何か不便や危険があってはいけませんから、、、地上に帰られた浦島様はまず、、、ほんと様変わりしてしまった、ご自分の故郷をふらりふらり歩いて見て回っておられました、ご自分のお生まれになったお屋敷のあたりに行かれましたが、お屋敷はありませんでした、、、たいそうご立派なお家柄の方でしたから、、、今でも何代か後の子孫が家を継ぎ、、、家が繁栄していてくれたら、、、と、そんな事をおっしゃりながらお屋敷を見に行かれたのですが、、、お屋敷はないどころか別の姓の屋敷に建て代わっていたのです、、、この土地を代々収めていた浦島家がどうなったか、、、誰か知る者はいないのか、、、と考えて、、、そうだ、神社に行ってみよう!という話になりました。浦島家がずっと神をお祀りしお世話させていただいていたという神社は、まだ存在していて、浦島様と私は、、、そこの神主に自分たちは都からの派遣の研究者で地方の様々な土地を調べて回っていると信じこませて、その土地の過去を知ることができる文献を読ませてもらったのです、、、
、、、そこには、、、こんなことが書いてありました、、、」

ツインテールの表情が
更に真剣に、、、そして、影を落としたように見えた、、、



(7話)
文献を手にした
浦島の額から汗がスーっと一滴、流れ落ちた、、、

手が震えていた、、、

「浦島様、、、いかがなさいました?」

文献を読み耽る浦島の顔色はどんどん悪くなっていった、、、

そして、、、
全てを読み終わると
茫然自失となり
名を呼んでもまったく反応しなかった、、、

ウミガメはそんな浦島の様子をハラハラした思いでしばらく見つめていた

そうこうして、しばらく沈黙の時間が流れていった、、、

そして、、、

ふらり、、、浦島は身を起こすとウミガメの化身に向かいこう言った、、、

浦島「、、、すまぬ、、、少しの間で良い、、一人でいたい、、、お前は、しばらくここに居てくれ、また、戻る、、」そう言って文献を読んだ蔵を出て行ってしまった、、、

その雰囲気があまりにも刹那的で一人になりたい。というのを止めることがどうしても出来なかった、、、

一体、文献にはどんなことが書かれていたのか、、、

ウミガメはそれを読み始めた

ーーー◯◯年◯◯月◯日
浦島家、若君、行方知れずとなり、はや、ひと月が過ぎた。
人を大勢雇い、ほうぼうを探し回るが一向にみつかる気配無し。
やはり皆が口々に推測するように、、、若君は海に呑まれたのやも知れぬ。はたまた、神隠しというものであろうか、、、
浦島家のご家中の皆様の
落胆ぶり殊の外激しく、特にお母上様にあっては病に臥せってしまわれた、、、
大変、心配である。


ーーー◯◯年◯◯月◯日
昼、ご用の帰り浜辺を通りがかる
浦島家、若君の奥方様が
幼子を連れて海をぼんやりと眺めておられた
わたくしがお声をおかけすると慌てた様子でこちらを見られた
たわいもない話を二、三したが心ここにあらずといったご様子。
やはり行き方知れずとなられた若君の事ばかりがお心を占めるのであろう。
ふと奥方様の腹に目がいった
奥方様の腹の出具合から
ご懐妊あそばしていると推察致す。
なんたることか若君がこのようなことになられたのに奥方様はご懐妊あそばされていたとは、
若君はたぶんご存知なかったのではないだろうか、、、
ご懐妊のお話をお聞きになる前に行き方知れずとなられたと思われる。
神よ、若君が、、もしも、ご無事でおられるならば、どうか、奥方様、お子様のところへ若君を一日も早くお返しくださいませ。


ーーー◯◯年◯◯月◯日
今宵は筆を運ばせたくない思いである、、、
今朝、浜に浦島家、若君の奥方様のご遺体が打ち上げられていたそうな
若君が行き方知れずとなり、はや、半年になろうとしていた矢先である
お戻りにならぬことに希望を失われてしまったのであろうか、、、人づてに御懐妊中の経過もあまり良くないと聞いていたがお腹の中のお子様を道連れに海に身を投げてしまわれたのだ、、、なんと、嘆かわしいことであろう。


ーーー◯◯年◯◯月◯日
浦島家では若君が行き方知れずとなってから
不幸ばかりが押し寄せている。
ひと月ほど前、若君の奥様が海に身を投げてお亡くなりになったが
次は遺されたお子様
一朗太様が流行り病に臥せり、あっという間に幼い命が天に召された。
父を失い、母も失い、最後はさぞお寂しかったことであろう。
魂が今頃は父母の元へ参っていることを願う。


文献を読むウミガメも先ほどの浦島のごとく、プルプルと震えが止まらなくなっていた、、、

まさか、地上で、浦島様の家族がこんなことになっていたなんて、、、

そして、その文献に
浦島家の末路はこう記されていた。


強国の攻めにあい、浦島家当主、次男、三男、親戚筋の方々が力併せ迎え撃つも敢えなく敗戦。
当主、次男、討ち死に。
三男、他、血筋の男子は捉えられ、皆、処刑。女子は寺などに預けられるか、または他家へ養子に出された。
この地に新たな領主がついた、、、これまでとは日々の暮らしも大きく変わるであろう。
今までは平安であった。
これからも皆の平安、息災を神に請い願う。


浦島家は没落したのだった、、、

ガタガタ震える手をぎゅッと握りしめ、文献を置くとウミガメもしばらく放心状態となっていた、、、
しかし、ハッとして蔵から飛び出走った、、、

浦島様!!

これを知った今
あの方は一体、どのようなお気持ちで、、、

ウミガメは浦島を探して走った。

つづく

次回は12月中旬頃、8話9話を掲載すます。