乙姫.迷宮Smile 12話、13話~あん 作~



(12話)
ヒラメとウミガメは浜に上がり、辺りの様子をうかがいながら、浦島がここを訪れるのを待った、、、

屋敷に向かうのがいちばん手っ取り早いが
よそ者は目立つし、、、
なんらかのトラブルに巻き込まれたら面倒になる。

ウミガメは偵察して、浦島は週に一度はこの浜辺にこっそり散歩にくる事を知っていた、、、

たぶん、今日はそろそろくる頃ではないかと踏んだのだ、、、

ヒラメ「浦島殿が現れたら手はず通りに、、、ウミガメ、心得ているな?」

ウミガメ「はいはいー分かってますってー」

呑気な返事に、ホントに大丈夫なのか?といった顔をウミガメに向けるヒラメだった

張り込むことしばらく、、、

浦島は現れた、、、

浦島のお気に入りは
この岩場だ、、、
岩場の陰にひっそりと一人座ってしばらく海を眺めるのが彼の癒しの時間なのだとウミガメは分かっていた、、、

推察に漏れることなく
いつも通り、浦島は岩場にやってきた

そして、待っていた
ウミガメとヒラメの姿に驚き

ザッ、、、と、左足を後ろへ退いて身構えた
手は、腰の刀にかけられている

「なに奴、、、この地のものではなかろう、、」

浦島はヒラメとウミガメをジッと見つめて言った

ウミガメがパッと明るい笑顔をつくって話しかけた!

ウミガメ「浦島様!再びお会いでき光栄です!」

浦島「、、、はて?そなたとどこで会うたかな?」

ウミガメ「、、、たぶんーー信じられないかもしれませんが、つい先日この砂浜でお助けいただきました!!ウミガメにございます!」

浦島「、、、、、」

絶句している、浦島を
ヒラメとウミガメは
まぁ、そりゃ、そうなるわな、、、と思いながら見つめていた。

浦島「、、、、、確かに前にウミガメの子を助けた、、、しかし、、、娘、、、何故にそのようなデタラメを申す、どういう魂胆があるのだ?」

怪訝な表情で浦島はウミガメを見据えた

ウミガメがややたじろぎながら、、、

ウミガメ「えーーっと」と、しどろもどろ答えようとしたところへ

ザッとヒラメが
前へ歩み出て、浦島の前に片膝をついてひれ伏した

ウミガメ「ヒラメ様!」

ヒラメ「若君、、、わたくしどもの話しはあなた様からすれば奇怪で、まことに信ずる難しとお察し申し上げます!、、、しかし、ここはどうか我々を信じて頂きたい!、、まずは、先日、このウミガメを童子たちからお救いくださり、誠に有り難うございました」
深々と頭を下げた

ウミガメも次いで深々頭を下げる

そして、ヒラメは話を続けた

ヒラメ「わたくしは、海の世界を納める竜宮の乙姫様に使えるヒラメにございます、、、わたくしどもは乙姫様の命によりあなた様を竜宮へお連れしたく、こうして参上つかまつりました!」

浦島は目をパチクリさせながら、ヒラメとウミガメを交互に見つめていた

ヒラメ「どうか我々と共に竜宮へいらしてくださいませ!」

ウミガメも一歩前に出て
浦島に懇願した

ウミガメ「浦島様!あの折はお助けいただき本当に有り難うございました!あなたがお助けくださらねば私はどうなっていたか、、、わたしをお救いくださったあなた様のお話を乙姫様に致しましたところ、姫はあなた様にぜひぜひお目にかかり、直接礼がしたいと仰せです!どうか、わたくしと竜宮へ、、、」

ウミガメが浦島の手を取ろうとしたが、浦島は、パッとそれをかわすと
少し後退った、、、

浦島「怪しき輩だ、、、なにを夢うつつのような事を言っておるのだ、、、そなたらはどうしたのだ?一体なにが目的か?」

ひたすらに怪しがる浦島の様子に、、、仕方ない、、、と、ウミガメは
やおら、身体を後ろにのけ反らせて変化を解くと
ウミガメの姿に戻った

浦島が絶句している
かなり驚いた様子で目を見開きウミガメを凝視していた

ウミガメ「ね、浦島様、あなたがお助けくださった亀ですよ、、、あなたはわたくしもこの世界に生きる仲間だとおっしゃてくださったではありませんか、、、どうぞ、信じてくださいませ」

浦島「、、、これは、なんと、、、信じ難い、、、夢ではないのか、、、あぁ、、、眠っては、おらぬ様だ、、、ならば、まことか、、、」と自問自答するようにブツブツ呟いていた。

ウミガメ「浦島様、一時で良いのです、我が主、乙姫に会ってください。どうか、あの時のご恩返しを私どもにさせてくださりませ」

ヒラメとウミガメに頼みこまれ、、、しばらく
考えこんでいたが、浦島はきっぱりと顔をあげると

ヒラメとウミガメに向かいこう言った

浦島「あい分かった、そなたたちと竜宮とやらに行こう。一時でよいのだな?」

ヒラメ「は、少しのお時間で結構です」

こうして、浦島は玉手箱に魂を預け入れる術を施され

ヒラメ、ウミガメに誘われるままに竜宮へと向かった、、、

心配されていたが
玉手箱の術はしっかりと効き浦島は海中でも陸地にいる時と同じように過ごすことができた。

どれくらい深く海中を進んだだろうか、、、

あたりは一面の青だ、、、
ゆらゆらと時折、魚の群れなどが過ぎ去る

よく目を凝らして見ると眼下に建物が見えてきた

ヒラメ「浦島様、、、あれが竜宮にございます!」

あれが、、、
竜宮、、、海底に美しく白く光って見える城があった

浦島は目を見開きそれを眺めた

つづく



(13話)
俺がここに来て、時間はどれくらいたったのかな、、、

ウミガメから浦島と乙姫が出合った時の話、そして、二人が竜宮でどんな風に過ごしたのか聞いた、、、

そして、浦島がこの世から姿を消したときの話しも、、、

ウミガメは心底辛そうで
浦島が消えた時の話をしたら、気分が悪くなり
しばらく休ませてほしいと言い、俺をこの部屋に残したまんま
どこかへ行ってしまった。

俺は一人だだっ広い部屋に残され今は乙姫の魂が入ってるとかの箱、、、たぶん玉手箱だろう、、、それをジーっと観察しながら
ウミガメが話した浦島の最後を思い返していた。

自分が竜宮へ行き帰らなかったあと、浦島家の人々を襲った数々の不幸を知った浦島は浜辺で己の罪を悔いてうちひしがれていたという、、、

ウミガメは、浦島をみつけて駆け寄った

ウミガメ「浦島様!!」

浦島は力なく
ウミガメの方を見た、、

浦島「カメよ、、、読んだのだな、、、文献を、、、わたしは何て事をしてしまったんだ、、、家族を不幸の底に突き落としてしまった、、、罪人だ、、、」

ウミガメ「そんな、、、あなた様は乙姫様を幸せにしてくださったではありませんか!」

ウミガメは必死にそう言った

浦島「、、、そうだな、、、わたしも姫と過ごせて幸せであった、、、しかしな、、、誰かを不幸にした上に成り立つ幸せなど、、、あってはならぬ、、、
わたしは、、、そんなこともスッカリ忘れ、、、竜宮で夢を見ていたようだ、、、わたしがしたことは決して許されない、、、カメよ、、、」

ウミガメ「、、、はい、何でございましょうか、浦島様!」

しばらく間を置き、浦島はゆっくりとウミガメを見つめて、それから海を見つめた、、、何か言いたげに唇を動かそうとしたが、すぐに項垂れてしまった、、、

そして、、、

ウミガメ「いけない!浦島様っっ!」
ウミガメが浦島を止めようと、、、飛び付いたが
間に合わなかった、、、

浦島は玉手箱の蓋を開けてしまったのだ、、、

ボンっ!!という音と共に、、、煙がたちこめて
浦島の姿はその煙と共にかき消えてしまった。

ウミガメ「!!!!!」

ーーーーー様、、、
う、浦島様、、、

ウミガメ「浦島さまぁっっ」浜辺にウミガメの叫びが響いた、、、

開いたままの玉手箱からは未だ細く一筋の煙が天に向かい登っていた、、、

脱力しウミガメはその場にへたりこんでしまった、、、

ーーーーーーーーーー

俺は自分がなんで
こんな場所に連れてこられたのか、いまだにワケが分からないまんまだ、、、

ウミガメには恩返しだとか言われたけど
恩返しって?
俺はここに来て、ただただ浦島太郎の真実ーーー!!的な話を聞かされているだけだ、、、

散々しゃべって、あのウミガメは気分が悪いと言っていなくなるし、、、

少し待てとか言うけど、、、

俺はハッとして
冷や汗をかいた、、、

たしか竜宮での時間て、、、地上よりかなりゆっくりだったよな、、、

てことは、俺がここに連れてこられて、どのくらいか、あんましよく分かんなくなってるけど、、、
地上じゃ、もう何日もたってんじゃないの?

、、、や、やばい、、、
こんなチンタラ、ワケの分からんことしてらんねーよ、、、

それに、、、
母さん、、、きっと心配してる、、、
俺が急にいなくなって
きっと周りは大騒ぎだろう、、、警察来たりとか、、、友達や学校は?
もしかしたら怪奇事件で
ワイドショーのネタになってたりして、、、

とにかく早く戻らねーと、、、
周りやワイドショーがどうの、、、は、この際どうでもいい、、、

だけど母さんにはこれ以上心配かけたくなかった

母さんは、、、俺を女手ひとつで一生懸命にここまで育ててくれた、、、
ちょっと天然で変わったとこがある母親だった、、、
例えば、、、この名前
志麻太郎、、、ずいぶんイジリ倒されてきた名前で、、、ハッキリ言って俺はこの名前が嫌いだ!
母さんに、なんでこんな風変わりな名前にしたか聞いてみたことがある
すると母さんはこう言った、、、

母「あらぁ、志麻太郎っていい響きだと思わない~?あなたが生まれて、顔をジーーっと見ていたら、しまたろうってフワッと浮かんできたのよね、それ以外に思いつかなくてねー、それから、漢字はねママがお世話になった施設のあの田中さんが考えてくださったのよーー植物の麻のように強い志のある子になるようにって、ねー!いい名前でしょー」

ニコニコと微笑む母親の顔が思い浮かんだ、、、
俺は母さんの笑ってる顔が好きだ、、、なんか、見ているとすごく安心するんだ、、、

が、しかしだ、、まぁ、あの天然ぶりはどうなんだ、、、と思うが、、、
そう名前のこと、、、
うーーむ、いい響きで
しまたろう、、、って

独特の感性だと思う。、、、憎めない母親だけど、、、

俺は部屋の扉に駆け寄ると、ドンドンと叩いて
外に呼びかけた

俺「誰か!!誰かいねーのか!?」

しばらく、扉を叩き続けた

すると、、、

「そんな大声をださなくても聞こえておりますよ、しまたろう殿」

いきなり背後から声をかけられてビクッとなる

振り返ると長身細身の男が立っていた、、、

この人、一体いつから中にっ!?

俺「だ、誰?」

男はゆっくり、こちらへ近づきながら言った

男「乙姫様の側近、ヒラメにございます」

あぁ、こいつがウミガメの話しに出てきた
ヒラメか、、、

俺「ヒラメ、、、さん、、、俺、、、どうなっちまうの?まだ、なんでここに連れてこられたのか核心の話し、、、聞いてないんだよね、、、いきなり連れてこられて理不尽だと思わない?それに地上じゃ、結構時間たっちゃってんでしょ?みんな心配してる、、、俺は一刻も早く帰りたいよ!」

焦って話す俺に
ヒラメはこう言ってきた

ヒラメ「、、、そうですね確かに理不尽極まりないですよね、無理やりさらってくるとは、しかし、あれの気持ちは分かります乙姫がお隠れになり海の治安は荒れる一方、、、姫なしに持ちこたえられるのも、もう時間の問題なのです、、、ウミガメは焦ってしまったのでしょうね、、、あなたを竜宮へお連れしようと言うのは皆の意志で決まっておりましたが、まさか、こんなにも早くにあなたをさらって来てしまうなんて、、ウミガメの非礼をお詫びします」と、深々と頭を下げた
俺「あーー、もうさ、ウミガメと言い、あんたと言い、話がまったく見えないんだよね、、、ハッキリ分かりやすく話してよ。俺はなんでここに連れてこられた?」
イライラがこみ上げてくる、、、
ヒラメはイラつく俺の気配を感じとったようで
ふぅ、、、と、ため息を漏らすと話しはじめた
ヒラメ「しまたろう殿、、、あなたには、どうか乙姫様をこの玉手箱から外に出していただきたい」

俺「は?どうやって!」
ヒラメは乙姫が隠れているとか言う玉手箱に目をやった 
ヒラメ「なんでもいい、、、箱の中の眠っている姫に呼びかけて眠りから覚ましていただきたいのです、、続きはわたしからお話しましょう、、、」
ヒラメは、また、話しだした、、、

つづく

14話15話は2月上旬にお届けしまーす!